天王寺動物園では、平成26年7月24日(木曜日)に希少種であるナベヅルのヒナが1羽ふ化した(平成14年以来12年ぶり)。


ナベヅルは、日本の動物園では飼育数がとても少なく、3園(※1)で5羽(オス2羽、メス3羽)が飼育されているだけ。そのため、メス2羽を飼育していた天王寺動物園が、オス1羽のみを飼育していた東京都井の頭自然文化園から、「あべのキューズモール」のスマイルプロジェクト(※2)での輸送費協力のもと、昨年12月20日にブリーディングローン(※3)にて借り入れ、繁殖をめざしていたもの。

本年4月26日と28日に産卵、いずれもふ化に至らなかった。その後、6月26日に再度産卵し、この卵が7月24日にふ化した。

 

(※1)日本の動物園での飼育状況。

大阪市天王寺動物園 オス1羽(東京都井の頭自然文化園からブリーディングローンにて借り入れ中)、メス2羽(今回繁殖したヒナを含まず)

西海国立公園九十九島動植物園 オス1羽、メス1羽

東京都井の頭自然文化園 (オス1羽を天王寺動物園へブリーディングローンにて貸し出し中)

 

(※2)スマイルプロジェクト

当園の近隣商業施設「あべのキューズモール」が2011年の開業時から取り組む、地域と一体となって活性化をめざすための社会貢献プロジェクト。

ナベヅル輸送にあたっては、プロジェクトの趣旨に賛同した利用客が買い物で獲得したポイントカードのポイント寄贈などを基にした費用で輸送を実施した。

同プロジェクトでは過去にも、不在となっていたケープハイラックス3頭の寄贈を受けている。

 

(※3)ブリーディングローン

動物園同士が繁殖を目的として動物を貸し出し、あるいは借り入れする契約のこと。動物の購入費がかからないので、希少動物の移動や繁殖も活発に行えるメリットがある。貸し出した動物の所有権は元の動物園に残ったままであるので、生まれた子どもについては貸し手と借り手でその所有権についての協議を行うこととなる。

 

ナベヅル

ツル目ツル科 学名:Grus monacha 英名:Hooded Crane

全長1mの小型のツルで、胴体の羽の色が鍋底に付いた煤(すす)のように見えることから「ナベヅル(鍋鶴)」(標準和名はカタカナ表記)と命名されています。

東シベリア南部とロシア極東南部のアムール川、ウスリー川、レナ川流域、中国黒竜江省などで繁殖し、中国南東部の揚子江下流地域や朝鮮半島南部、日本の鹿児島県で越冬する。特に、鹿児島県出水地方には全個体の90%以上が飛来していると考えられ、2012年12月8日には10,441羽を計数した。この個体群の過密状態により、感染症が蔓延するリスクが指摘されてきたが、2010年12月~2011年2月にかけて、出水の越冬個体群の7羽で高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)の発生が確認された。個体数への大きなダメージとはならなかったが、今後の過密状態の解消が望まれる。これまでも分散化の試みはあったが、実効のある手法は確立されていない。HPAI発生以降、地元自治体と鹿児島大学を中心に死亡ツル類のモニタリングを継続しているが、再発生は確認されていない。

ワシントン条約(※4)附属書Ⅰに該当。

IUCNレッドリスト(IUCN Red List of Threatened Species):VU

環境省レッドリスト(Ministry of the Environment Red List):絶滅危惧Ⅱ類(VU)

 

今回繁殖したナベヅル

オス親

生年月日:不明中国生まれ

入園年月日:平成25(2013)年12月20日来園(東京都井の頭自然文化園より借用)

飼育歴:平成元(1989)年6月29日 東京都多摩動物公園に入園

平成7(1995)年6月29日東京都井の頭自然文化園に移動

平成25(2013)年12月20日大阪市天王寺動物園に移動

 

メス親

生年月日:平成16(2004)年6月10日

天王寺動物園生まれ

飼育歴:当園で繁殖後、単独飼育されていたため過去の繁殖歴はありません。


関連リンク
天王寺動物園でナベヅルのヒナが生まれました